超世紀全戦隊(違)大集合

 今年の6月に劇場公開された『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』を先日観ました。スーパー戦隊最新作『海賊戦隊ゴーカイジャー』のキーコンセプトである歴代35戦隊の揃い踏みと、既存の新旧戦隊VSシリーズに当たる「ゴーカイジャーVSゴセイジャー」の二つの要素を併せ持った企画です。

 始まってすぐに、歴代の戦隊メンバーがずらりと勢揃いする「レジェンド大戦」の描写がとにかく目を引きます。この様子は『ゴーカイジャー』第一話冒頭でも描かれていましたが、映画ではさらに尺を取ってたっぷりアクションが展開されています。マーベラスではありませんが、冒頭からとにかく「派手に行くぜ!」という勢いです。
 さらに物語が進むにつれて、“大きなお友達”にとっての見どころである過去戦隊のオリジナルキャストが次々に登場します。もちろん変身後のスーツ姿と違って全戦隊勢揃いというわけにはいきませんが(スーツですら揃えるのは結構大変だったようですし)、記憶に新しい最近の戦隊に重点を置きつつもなるべく世代が偏らないように、オリジナルキャストの登場していた作品についてははなるべく分散を図っているようです。なお、TV本編の方でオリジナルキャストは各作品からほぼまんべんなく登場しているので、映画だけでは物足りず「私の好きなあの作品はどこ?」と思っている人は、TVのほうで補完していただくということでしょう。
 クライマックスでは、共闘関係になったゴーカイジャーゴセイジャーが、文字通り過去の全スーパー戦隊と戦っており、同色同士の組み合わせなど様々な趣向の殺陣が観られます。最後には戦隊名物巨大メカまでが揃い踏みし、こちらは似たようなモチーフのメカの組み合わせによる同時攻撃などが出色です。しかもこの最後の大決戦にかかるBGMはなんと初代『ゴレンジャー』のオリジナルOPソング。全戦隊を一曲で象徴させるとしたらゴーカイでもゴセイでもなく元祖しかない、という判断には頷かされます。劇場公開の時にはここで涙腺の緩んだお父さんお母さんも多数いるとかいないとかと聞き及んでおりますが。

 もう一つの企画コンセプトである「新旧戦隊VSシリーズ」の側面では、戦隊の力たるレンジャーキーを手に入れながらまるで地球のために戦う気のないゴーカイジャーと、地球のために戦う気は十分ながらその力を失ってしまったゴセイジャーが、力を巡って対立しながらもザンギャック(ゴーカイジャーの主敵)と黒十字王(元祖スーパー戦隊『ゴレンジャー』の主敵たる黒十字総統の復活版)との戦いになだれ込んでいきます。従来のVSシリーズであれば、多少立場的な相違はありつつも面と向かっての対立は無いのですが、本作では互いに一歩も譲れない「力」が対立の焦点になっているせいで、両戦隊は正面衝突して文字通りの「VS」状態になっています。この描写が自然に成立するのは、もともとゴーカイジャーが正義だの地球の平和だのといった大義にまったく興味を持たない、戦隊としてはかなり癖のある設定になっているおかげでもあり、『ゴーカイジャー』の特殊性なくしては成立しなかった構図でしょう。

 最近の特撮でしばしば追求されている人間関係やドラマ性の「深み」のようなものにはやや欠けますが、それを補って余りあるアクションの充実と「お祭り」が楽しい作品です。とにかく単純に楽しんだ者の勝ちという、ある意味でもっとも正しい「ツッコんだら負け」な作品ではないでしょうか。
 ……とはいえ、『仮面ライダーディケイド』に続いて最後の切り札を出してしまった感のある東映特撮、今後はいったいどういう展開を考えているのでしょうか。何でもこの冬にはゴーカイジャー宇宙刑事ギャバンが共演する映画が公開されるんだそうで、そのうちロボコンマシンマンまでが戦隊やライダーと共演する時代が来るんでしょうか?