TW

 最近気になった歌を聴きながら、いろいろと思いを巡らせる。

この世界の単なる敗者でいられないのなら
両耳ふさいで 闇雲に暴走すること
本線から踏み外していくこと
それこそ健全じゃないか
I'll try to keep in contact with you

石川智晶「TW」)

 本線から踏み外していく生き方に、始めは何らかのロマン的決意があったにせよ、あまり長く続き過ぎるとそれもまたひとつの惰性と化してしまう。でも若い時分にはそのことに気付かない。気付いた時には遅すぎる。そういうものなのかもしれない。
 誰かに自分の生きる世界を語らせない、代理/表象させない。そう決意して思って自分自身の、自分だけの言葉を紡ごうとあがき続け、その果てに見える地平は何だったか。

 人ならざる身になって人の世に帰還した青年と、かつて国を失いながらも自らの信ずる道を生き抜いた盲目の老姫の再会。私はそのシーンを美しいと思う。描かれていたのは、自らの意志で「踏み外した」果てにもたらされた救済であり、それがあの作品なりの「幸福」、あるいは現実にはそうそうあり得ないという意味でのファンタジーなんだろう、とすら思う。