ガンダムAGEのRPG

 自然科学の斉一性原理みたいに、何故その原理が存在するのかはわからないけどそれを前提しておくとそのあとの説明が上手くいく、みたいな「とりあえず仮定する前提条件」がある。こうした原理は、後からそれ自体が根拠づけされる場合もあれば、根拠づけされぬまま継続適用されることもある。
 以前にも書いたことだが、『ガンダムAGE』の展開にRPGっぽさを感じる理由の一つは、作品世界の基本構造がコンピュータRPGに見られるシステムや操作手順に準拠しているものとしてとりあえず前提すると、作中で変だと感じられる描写にある程度整合的な説明がつくからだろう。
 このへんについては、以前は漠然とした印象で感じていたにすぎないところが大きかったのだけれど、第11話の描写からある程度はっきりした見通しがついた。第11話ではマッドーナがエミリーに呼びだされた後、2週間かかるはずのコロニー間(ファーデーン近傍からミンスリーまで)で、ほとんど瞬間移動したとしか思えない早さで到着したことがあり、これについて「来年発売のゲームの方では登場イベントの後いつでも呼び出せるようになっているからじゃないか」と予想している人がいた。「もしフリットを主人公としたRPGを、従来のRPGの操作手順をなるべく保持した形で製作したらどうなるか」という観点から物語を捉えると、それなりに整合的な捉え方が可能となりそうなのだ。
 別の例で言えば、第12話「反逆者たちの船出」でラーガン登場のジェノアスがようやく単独でUEを撃破できるようになったけれど、「なんでAGEシステムはラーガン用のドッズライフルをもっと早く作らないんだ」とは以前から言われていたことだ。何故AGEシステムは、ディーヴァ改造などという大がかりな命令を承諾する一方で、ジェノアス向けのドッズライフル生産というずっと簡単なことをやってくれないのか。これもまた、AGEシステムが、行動主体となるユニットを単位にしたパラメータ変化の機能に相当するものであると解釈すると一応説明はつく。さらにこのAGEシステム機能は、恐らく特定の行為ユニット、端的に言えば主人公フリットが直接的に属するユニット(MS搭乗中にはガンダム、または乗艦中ならディーヴァ)以外には働きかけを行なっていない、というより行えないのだろう。ドッズライフルのように一見外付け強化に見えるものも、作中意義としてはガンダムという行為ユニットのパラメータ向上の操作(「ガンダムの中距離攻撃パラメータ上昇」みたいな)に当たるのだろう。
 前回までのここから推測を進めて、ゲームの中のジェノアスが(もしかしたら他MSも)パラメータを向上させることが出来ない、恐らく味方側NPCキャラに近い存在なのかもしれないという予想をしていたのだが、第12話でラーガン機が強化されていたのを見ると、どうやらミンスリー以後にマッドーナを呼びだすとフリット以外のユニットも強化=パラメータ向上できる(ただし完了までに二週間かかる)のだろう。作中世界では主人公のパラメータ向上機能が「AGEシステム」、それ以外のパラメータ向上機能が「マッドーナ」に集約されていると考えてよさそうだ。この「マッドーナ」機能は、初めての登場であるファーデーンではイベント的にウルフのMSの機能向上だけを行ったが(ドッズライフル同様、一見ジェノアスカスタムからGエグゼスへのMS乗り換えに見えるが作中意義としては「プレイヤー側サブ攻撃ユニットBのパラメータ向上」に当たるのだろう)、その後はディーヴァ(パーティ)がコロニー(「街」)に停泊している時に随時呼び出しが可能で、呼び出して機能を開始させると、前述の通りプレイヤーの主ユニット以外(ジェノアスやエウバのMS等)のパラメータを、二週間かけて向上させることができるというものなのかもしれない。