技術のための技術

 そして今日のメインディッシュ。ROBODEX FORUM最終回 「脳とバイオロジーとロボット」。本当は1時からの「人工筋肉-高分子アクチュエータ」も予約していたのだけれど講師の都合で中止で残念。しかし、この最終回はそんなことを吹き飛ばすほどのフォーラムとなったのです。
(略)
 私らには大分理解に及ばない領域で研究されている3人だけれど、何事も「新しい着眼点」から始まっていた。考えていればどうにかなる訳ではなく、とにかく何かを作って動かして反応を見てみる。これが大切だと言うことだった。相互作用を見るのに作用させる実際のロボットがなくては話にならない。そういう話だ。

 沢山の話の中で最後に出すとすれば『本当のヒューマノイドロボットは役に立たない』と言う話だろう。これは大学時代にTHOU氏に「何で人型ロボットが作りたいんだ?」と聞かれたときに答えられなかった理由で、ここに来て「なるほど」と思ったのだ。産業ロボットや民生ロボットは役目を持っているが、では純粋に人間に近いロボットが出来た時にいったい何に使えるのか。何の役にも立たないのだ。もし人間のような意識を持っているとしたら、人間に命令しているのと同じで反抗もするのかもしれない。普通に転ぶのかもしれない。そんなロボットが役に立つ分野といったら見世物小屋しか無い。じゃ、なぜそんなロボットを作りたいのか?と聞かれたら、「純粋に作りたいから作りたい」としか答えられないのがアトムなのだ。

Shooting Star LAB ─ Diary 2003年4月6日

 2003年に開催されたロボット博覧会「ROBODEX 2003」は、鉄腕アトムの誕生日である2003年4月7日を意識したのか4月3~6日に会期が設定されていたそうですが、仮に誕生日とは関係なかったとしても、日本でのロボットを巡る想像力は、文化史の流れからいってやはりどこかで原点としての鉄腕アトムを志向することになるのでしょう。道具としてのロボットではなく、有用性を超越したところに位置づけられる自律的なアイコンとしてのロボット。ある種倒錯した構図ですが、「芸術のための芸術(l'art pour l'art))」よろしく「技術のための技術」とでも言えばいいでしょうか。
 とはいえ個人的には、こうした自己目的的な技術志向にもちょっとした(『天空の城ラピュタ』みたいな)危うさを感じることがあるわけで。