ニュアンス

 世間一般と同様に、Twitterでも時々ちょっとしたトラブルが起きたりします。
 以前に起きた論争では、他人の発言をリツイート(引用)した時に、発現の省略や言い換えは許されるのかということが論点になっていました。省略箇所を示すような表示があればまだよかったのでしょうが、わずか140字の中に相手の発言の引用と自分の発言を詰め込むとなると、「(略)」というたった3文字でも文字数を使い過ぎに感じられるところ。で、引用した人は発言の一部を「(略)」や「…」等の記号抜きで一部省略したり、別の短い表現に変更したために、引用された人から「まるでその発言を俺自身がしたみたいに見えるじゃないか、そんな編集するな」と言われていました。省略や言い換えがいけないというより、そのような編集を行った結果の文章を「@」付きで(つまり相手の発言の引用として)書いたことが問題になったようです。
 文章は難しいもので、ちょっとした言葉の省略や言い換えでニュアンスががらりと変わったりすることがあるものです。ちなみに先の大震災以降、Twitter上では「自分のコメントを交えずに引用する時はなるべく公式RTで」という暗黙のルールが広まっているようですが、これは同じ情報が何度もタイムライン上に現れるのを防止するという主たる意義の他に、省略や言い換えによって元の情報が少しずつ変形していってだんだんデマに近い内容に変わってしまうのを防ぐという意味合いもあるように見受けられます。

 ちょっとした違いがニュアンスを大きく変える例というと、昔見かけたソ連のこんなアネクドート(政治ジョーク)を思い出したりします。

 ……追放されたトロツキーからスターリンに手紙が届いた。
「僕が間違っていた。君が正しい。君こそ真の指導者。僕は違う。すまなかったね。トロツキー
 スターリンが側近に手紙を見せて自分の政治的勝利を誇っていると、フルシチョフが現れて、「同志スターリンは『ユダヤ的読み方』をご存知ないようですな。この手紙はこう読むのです」と言い、手紙を朗読した。
「僕が間違っていた? 君が正しい? 君こそ真の指導者? 僕は違う。すまなかったね。トロツキー