新しい物

 これは名文。

 「新しいから傷つける」

 まったく新しい物を人に奨める時、奨める人はそれが相手にとって「未知の物」=「自分の世界を壊すかもしれない怖い物」であることに気づかない。なぜなら、「新しい物」というラベルこそ貼ってあるものの、奨める人にとってそれは他人に奨める時点で既に「既知の物」だからだ。「新しい物」という触れ込みで「既知の物」=「自分にとって馴染みの物」を売り込む。だが、馴染みだからこそそれは未知の物の怖さを持たないのであって、「新しい物」(という名の、奨める人にとっては「既知の物」)を奨める人は、その認識ギャップをしばしば忘却する。