『惑星』のイメージ

 スラトキン指揮、フィルハーモニア管弦楽団による『惑星』の新譜がテルデックから出た。グレー基調のイラストで、月面の空に大きく浮かび上がる星雲を描いていて渋い。
 (略)高校に進学し、吹奏学部に入部したばかりの頃のことだ。まだクラシック音楽との接点は殆どなく、レコードを買ったこともなかったある日、吹奏学部の練習で音楽室へ行くと、先輩の譜面台に"Jupiter"と書かれた楽譜がのっかっている。……
(略)
 同期の友人が「プレヴィンとロンドン響の演奏がいい」と教えてくれた。しかし親父と出かけたダイエー戸塚店のレコード屋には、たまたまバーンスタインとニューヨークフィルのものしか無かった。「これでいいじゃねぇか」という親父の発言で、結局バーンスタイン盤を買ったが、このジャケ絵がイマイチだったのである(^_^;)。プレヴィン盤は日食の写真で、漆黒の闇を背景にコロナが映えているもの。バーンスタイン盤は何だか占星術に材をとったイラスト。このプレヴィン盤のジャケ絵が綺麗で羨ましかった。
 でも、よく考えてみるとプレヴィン盤、太陽と月が写っているわけだが「惑星」なんかどこにも無いのである。その後何枚かの「惑星」のジャケ絵に接したが、どれもこれもイマイチなんだなぁ。何となく「宇宙的」ってコンセプトのものはたくさんあって、大星雲の写真をのっけたり(カラヤン盤)、想像で描いたどこかの星のイラストをあしらったり(マリナー盤、小澤征爾盤など)、等々。占星術系(!)ではレヴァインのものなどもある。でも、パッとしないものが多い。メータ=LAPO盤は指揮者の手元だけを長時間露出かなにかで撮った写真で、なんだか訳が分からない。
 やや印象に残っているのはマゼール=フランス放送響盤のオリジナルジャケット。衛星の地平線の彼方に上りつつある土星という構図だが、この土星を画面中央に垂直に配置している。土星の輪も殆ど一本の鉛直線。このセンスは素敵だ。もっとも、既にキューブリックが『2001年宇宙の旅』で完成しちゃったデザインだけど。
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ジュピター、快楽をもたらすもの ─ 新・東越谷通信 1997年7月27日

 交響曲全体を一枚絵の視覚イメージとして表現しろと言われた場合、どういった部分を切り出すか、あるいは全体としてどのようなイメージにまとめ上げるかは、人によって千差万別となるでしょうね。しかもホルストは自然科学としての天文学というよりも占星術や神話のイメージを曲想に強く込めているので、太陽系惑星そのものの絵ではなく「占星術系」やギリシア神話のイメージのほうにイメージを振っても、別に“誤答”にはならないのです。ボイジャー2号やはやぶさを描き足すのはさすがに無理があるかもしれませんが。w
 上記引用文の書かれた1997年には取れなかった方法だと思いますが、今なら手軽にジャケット絵を比較しようと思えば、amazonやbk1やタワーレコード等のオンラインショップサイトの商品検索で「ホルスト」「Holst」あるいは「惑星」「Planets」等のキーワードを条件にいれて検索することで(ジャンル選択が可能なら「クラシック音楽」も)、とりあえず商品ラインナップに入っているジャケットを一通り見比べることが出来ます。輸入盤込みで検索するなら英語表記がお薦め(または米本国のamazon.comで見てみる等)。ちなみにマゼール指揮版の垂直土星ジャケットはこれのようです(amazon.co.jpより)。また、「Vinyl-Records.biz」でホルスト関連のLPレコード版ジャケットを見ることも出来、こちらにはCD版には無いジャケットデザインがいろいろ載っています(上記記事にあるプレヴィン版の日食ジャケット等)。