自然

 ふっと考えることがあるんだけど、日本って人も含めて「昔」に対する執着心というか、保存精神がないなぁってかんじるの。それは文化的なものも、自然的なものもそうだし、建築とかの物的なものでもそう。特に自然なんて 「自然との共存」とかうたっちゃて、それって結局昔からある自然をいじくって自分の都合のいい状態にしてるだけじゃないかなぁ……
 それが小規模ならいいかもしれないけど、社会全体でそれをしたらまずい気がする。ごめんね、なんか堅い話で。最近チョウチョウとか身近に自然がないなぁって感じちゃって。
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休憩室 1999年4月25日

 私もこういった話を時々考えることがあるのですが、もしかしたら豊かな雨と適度に高い湿度のおかげで日本の国土が四季折々の植生の循環的変化に恵まれてきたために、自然とは放っておいてもじきに豊かに自生するものであって、特に人為的に手をかけて“保存”しなければすぐに失われるなどというような代物ではない……という観念が、多少形を変えながらも日本の生活文化の中に残っているのかもしれません。時として台風や大雪などといった“荒ぶる自然”の相貌を見せることはあるにせよ、とにかく自然は与件としてそこにあり人間に恵みを与えてくれるのが“自然”な状態として感じられているのではないか、という気がしています。
 自分の生きている生活環境に対する「甘え」のようなもので、多少環境に無理をかけても大丈夫だよね、また母なる自然がきれいに洗い流してくれて、季節は巡りまた春がやってきて桜も咲くよね、といったような、よく言えば全幅の信頼、悪く言えば環境に対して無責任な感覚が、どこかにあるんじゃないかと思うのです。