廃墟の美

ラテン語は動詞の活用、名詞・形容詞の変化がドイツ語よりはるかに凄まじく、そのルールを覚えるだけで目一杯だった記憶があります。
(略)
これほど覚えること盛りだくさんのラテン語ですが、登摩先生が「完璧な言語」とおっしゃたのは、それが死語だからではないかと思います。長年ヨーロッパでは教会の公用語として文語として使われていましたが、口語としてはとうに廃れていたようです。よく、「日本語の乱れ」などと聞きますが、それは言葉が生きている証しでもあるように思います。そういう意味ではラテン語は生のダイナミズムと引き換えに美しさを得た、とも思えます。

日々の徒然:ラテン語。 2010年2月15日

 建築の廃墟にしばしば美が宿るように、言葉の廃墟にも美が宿るのかもしれません。もはや日常生活に即したリアルタイムな発展という意味では決して変化しないからこそ、泰然として動かない廃墟のスタティックで硬質な魅力が鈍く光る、のかも。