同時代的な語感

 ……「リモコン」と言えば「リモート・コントロール」の略語であることは当たり前だと思っていた。ところが、『朝日新聞』2001年3月5日付夕刊11面の「基礎探語」欄に、「リモコン」の見出しで、以下のように書いてあった。
 もちろん、リモート・コンピューターの略ではない。でも、そう思えてしまうほど、高機能のものが登場している。

 正しくはリモート・コントロール。遠隔操作という意味だ。
 かつて(15年ほど前)、「こん」で終わる言葉をどれだけ思い出すことができるかという一人遊び(笑)をしたことがある。「結婚」「レンコン」「ノーコン」「ミスコン」「マザコン」など。40から50くらいはそらで出てくるようになった。コンピューター時代にふさわしく、「こん」で終わる言葉にコンピューターの略称が出てくるようになった。

 「ファミコン」「ポケコン」「スーパーコン(スパコン)」。でも、まさか「リモコン」の「コン」がコンピューターの略称であろうとは思いもよらなかった。古いタイプの人間だから、リモコン時代を生きてきた人間だから、リモコンのコンはコントロールの略である。それが、今や、コンピューターのコンだと誤解されかねない情勢である。

むささびとびのしんの身辺雑記 2001年3月6日

 コンピューターが生活の隅々にまで入り込んで日常的に見慣れた存在になっていくにつれて、後から生まれた言葉が、逆にそれ以前から存在する言葉に影響を及ぼして、後から生まれた言葉のほうが前からある言葉よりも何となく当たり前のように感じられていくのかもしれません。同時代的に共有される“語感”みたいなものなのでしょう。いずれ別の何かが「コン」の座をコンピューターから奪い取る日も来るのでしょうか。