題名

 いつも、絵が仕上がると、本人に題名をつけてもらうのだが、その題名によって絵の雰囲気って大きく変わってしまうものである。子供に「題名はなーに?」と聞くと、大抵は「鳥」とか「猫」とかせいぜい「○○の親子」とか、見ればわかるって、と言いたくなるような題名をつけるのだが、中にはセンスがいいのや、面白いのやいろんなのが出て来る。
 今日絵を仕上げたゆうすけ君(小6)は、海の中、鮫と一緒に泳ぐ少年(?)の絵を描いていた。さて、「この絵の題名は?」と聞けば「世界新記録を出すために何があっても、泳ぎ続けろ!」という長いものだったのだが、題名がついた途端、なんだか急に絵が立派に見えてきたから、不思議なもんだ。

ひとみの雑記帳 2001年9月6日

 題名によって意図的に展示物の“意味”を変える試みとしては、マルセル・デュシャンの「レディメイド」が有名ではないかと思います。これは既成の品物に予想外のタイトルを付けて展示することで、対象から既存の有用性の“意味”を剥奪しようとする試みです。対象の意味とは対照それ自体に“本質”として内在しているのではなく、あくまで人間が与えているものなのだという唯名論的(あるいは構造主義的)な発想の、美術分野における現れの一つではないかと思います。